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ロマン主義のふたりの巨星、ショパンとドラクロワ  ~葬送~  [読書&映画]

オーギュスト・クレザンジェ ショパンの墓.png

 ジョルジュ・サンドの娘のソランジュの夫

オーギュスト・クレザンジェが作ったショパンの墓の彫刻

やっと読み終わりました、平野啓一郎、

葬送です。

葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)

葬送〈第1部(上)〉 (新潮文庫)

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: 文庫

葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫)

葬送〈第1部(下)〉 (新潮文庫)

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: 文庫







葬送〈第2部(上)〉 (新潮文庫)

葬送〈第2部(上)〉 (新潮文庫)

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: 文庫



葬送〈第2部(下)〉 (新潮文庫)

葬送〈第2部(下)〉 (新潮文庫)

  • 作者: 平野 啓一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07/29
  • メディア: 文庫




主人公は19世紀フランスのロマン派、一人は絵画の巨人、ドラクロワ。

もう一方は音楽家、「ピアノの詩人」のショパンですね。

ショパン.png
428px-Frederic_Chopin_photo_sepia.jpg

あっと驚くショパンの写真!

ええ~、こんな人だったのぉ~?

わたくし、ピアノのほうはちょっとだけたしなんだことがあるので、

ショパンのノクターンとかワルツ弾いてみたコトがあるし、

実際、曲のほうもとても哀愁漂う、ロマンティックな旋律なので

とても親近感がありました。

が!ドロクロワ。

ドラクロワ.png

 ウージェーヌ・ドラクロワです。

実の父親はタレーランといわれています。

ちょっとこの人、わたくし実は苦手な人でして、

グロの絵ならば「いいなぁ~」と思えるんですが、

あのぐにょぐにょさがちょっと~なのですね。

delacroix4サルダナパールの死.jpg

 「サルダナパールの死」

目にも鮮やかな色彩。これこそがドラクロワの真骨頂といわれていますが・・・・

~放蕩のそれ自体が放蕩であるかのような豪奢な終焉。

黄金の粉飾を施された煌めくように贅沢な虐殺。

躍動する残酷。破裂した恐怖。

苦悶の叫喚を管弦楽のように鳴り響かせる強烈な色彩。~

「葬送」より

たしかに色彩豊かっていうのもうなずけますし、

ダヴィッドとかアングルみたいに形式主義に走って

フリーズしている絵と違って、動きがあるのはわかるんですが~。

アルジェの女たち.jpg

 みようによってはゴヤにも見えるんだけど?

「アルジェの女たち」

絶対に上の「サルダナパールの死」と筆触が違う、と思う・・・・???

思うに、この人、人物があんまり得意じゃないのでは?と思われるフシもあり、

(あ、実際小説にそう書かれていた・・・・)

キオス島の虐殺.jpg

「キオス島の虐殺」

このぐちゃぐちゃ感が個人的にキライ 汗 

なんていうんですかね、ルーベンスなら一目でルーベンスとわかるし、

ラファエロならどの絵もラファエロらしさ、みたいなものがあるのに対し、

ドラクロワは「これぞドラクロワ!」みたいな独自性ってないような・・・・。

地獄のダンテとヴェルギリウス.jpg

「地獄のダンテとヴェルギリウス」 

下の裸の男たちってジェリコーのようでもあるけど、

舟の中の人物と水中の人物との間に統一感が取れてないような気がする・・・・・?

なんかドラクロワになると評価が厳しくなるわたくし 汗

偏見ですかね・・・・?

ただし、小説にも描いてあったとおり、ドラクロワは形式主義に陥るのを良しとせず、古典などの

技術的なものをきちんと踏襲しながらも、常に新しい形式を求めていた・・・・ということです。

ふぅ~~ん。

わたくしは象徴主義のモローがすきなんですが、モローの師匠はドラクロワなんですよ。

で、あるときモローの絵の中にドラクロワの絵に見られる「赤・青・緑」を主に使うっていうのを

忠実に踏襲しているのをみて、「あ、やっぱモローといえど、ロマン主義や新古典主義という伝統の後継者なんだな」

な~んて納得したことがあります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

閑話休題

絵や音楽のことはこれぐらいにしといて、(じっくり知りたい人は本書を読んで~)

読んでいるとまるでこれはバルザックが書いたのではないだろうか?などと錯覚しちゃったりするんです。

それぐらい、19世紀フランス小説に近いものがある。

それはあとがきにご本人さん自身がそれを目指したといっておられるので

その目的は達成されたわけですネ。

とはいいながらも、バルザックほど饒舌じゃなくて、ほどよく制御されているって感じです。

なにより文章が本当に巧みで、(翻訳じゃないので独特のクサミがない)

なんだか、フランス小説のようでありながらも、

その一方で文体が夏目漱石の「こころ」や「明暗」にも通じるものがある気がします。

平野さんはデビューしたとき、「三島由紀夫の再来だ!」なんて騒がれていましたが、

わたくし個人としては、三島サンの上を行っているような気がします。

とにかく平野氏の文章はさらりと描かれているけれど、一語一語がものすごく的確なんですよ。

なんていうのか、細かいジブソーパズルの部分が、ぴったりと収まるような感じ?

みな似たような形をしているけれど、収まるピースはひとつだけでしょ?

実に情景描写が上手い。どうしてこうも、美しい文章が綴れるのか・・・・やっぱり才能なんですね。

あと、ひとりひとりの人物を書き分けるのも巧みです。

薄絹の上にさらに薄絹を重ねたような人の胸の奥に去来する秘めたる思いを

こうまで、精緻に描くことができるなんて本当に奇跡のようです。

それも当時25歳のほとんど人生経験もないような青年が、です。

わたくしなんて、今のこの年になってやっと人生の奥深さがわかってきたというのに、

天才は早熟にして、すでに老成されているんでしょうか?

文中にモーツァルトがそうだ、という会話がなされているのですが、

それはそのまんま筆者にも当てはまっていると思えるのです。

人間はひとつの行動に移すまでに、一瞬のうちにいろんな思いを抱えているものですよね。

そういう多面的な、一見すると二律背反してみえる行動も、ていねいに描いている。

ドラクロワとショパンの友情というものは、分野は違えど実力が伯仲しているふたりであるからこそ

成り立つものです。

しかも彼らはミューズの女神の奴隷ですので、

自分の才能を発揮するためなら、ほかのことをカンタンに見捨ててしまうことができる

エゴイストでもあります。

でも、お互い自分の感じたことを共感できるのはショパンだけ、

ドラクロワだけだ、と思っているのですね。

親友なのに、死に瀕しているショパンを見捨てるような態度をとり続ける

ドラクロワのことを周囲の人は非難しますが、

ドラクロワは冷血漢じゃないのです・・・・。その坦々とせざるを得ない複雑な胸中の

彼の苦しみをどうぞ、本書を読んで堪能してください。

ああ天才というのはいかに周囲に溶け込むことができず、

さりとて、共感されることもなく、

なんと孤独な魂なのかと嘆息してしまいます。

また、ショパンとジョルジュ・サンドの愛、

ジョルジュ・サンド.png

そしてジョルジュ・サンドとその娘のソランジュの葛藤。

その母と娘の間に立たされた年下の「愛人」としてショパンの葛藤。

あと、ソランジュの夫のクレザンジュ。いい味だしてます。

バルザックの小説だったらこのクレザンジュなどは典型的なならずものであり、

(そう!たしか「従姉妹ベットにそういう芸術家くずれのダメ男が出てきます!)

家庭の破壊者で、悲劇的な結婚生活になるはずなのですが、

意外や意外、彼は一流の彫刻家となって世に名を遺しています。

ショパンのことを熱愛し、この人のためならと尽くして尽くしまくる

スコットランド貴族、ジェイン・スターリング。

彼女はショパンの弟子でしたが、イマイチ感受性が鈍く、

聡明でないので、ショパンに嫌われちゃうんですよね・・・・。

みんな、み~んな一生懸命生きているし、お互いのことを考えている、

けれども、みんなそれぞれ自分の力の及ぶ限界っていうものもあれば、

価値観の違いというものもある。

そんなものが少しずつ作用して悲劇に向かっていくのです。

すばらしく緻密で、まるで手織りのレースのような感触です。

編んでいるときはピンやら絡まった糸ばかりのようでも

出来上がったものは息をのむような美しい図柄。

日本人離れしたスケールの大きい作品です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この間、フジ子・ヘミングさんの本を読んでおりましたら、

パリのモンマルトルの丘を降りたあたりに

「パリ市立ロマン主義博物館」があると書かれていました。

ここって、結構穴場だそうで、面白いもの色々と展示してあるみたいです。

070808_vie_romantique_02.jpg

パリ音楽散歩

パリ音楽散歩

  • 作者: フジコ・ヘミング
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2008/07/18
  • メディア: 単行本



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sadafusa

>月乃さま niceありがとうございます!

by sadafusa (2012-04-12 11:31) 

msdkodsa

はじめまして!葬送を読んでインタビュー記事や関連記事を探していてこちらの記事にたどり着きました。
私は美術に関しては学校の授業で習った程度の知識しかないのですが、こちらのブログを拝読して理解が深まりました。クレザンジェ、いい味だしてますよね^^
by msdkodsa (2016-06-27 21:29) 

sadafusa

msdkodsaさま

コメントいただきましてありがとうございます。

いえいえ、わたくしもただただ芸術が好きなだけで
そんなに専門的なことは知らないのです。恥

読んでいただけるだけでとてもとても光栄です。
しかも、コメントもいただけるなんて本当にうれしいです。

クレサンジェ、いいですね!

by sadafusa (2016-06-27 22:14) 

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